セラミックの加工は難しい?特長や用途、加工方法を解説

セラミックの加工は難しい?特長や用途、加工方法を解説

昨今では半導体製造装置や医療機器、航空宇宙産業に至るまで、過酷な環境下で耐えうる素材として「セラミック」の存在感が増しています。金属材料では対応できない高温域や腐食環境、また摩耗が激しい箇所において、セラミックは解決策の一つとして多くの場面で期待されています。
しかし、その優れた特性の一方で、大きな壁となるのが「加工の難しさ」です。本記事では、セラミックの基本知識から、なぜ加工が難しいと言われるのか、またその課題をどう克服して品質を高めていくのか、精密加工の視点から詳しく紹介していきます。

セラミックスとは

セラミックス(Ceramics)とは、一般的に「無機物を焼き固めた材料」の総称で、人工的に処理を行った無機質固体材料全般を指します。主な原料は酸化物や窒化物、炭化物などの無機化合物で、主に高温で焼成して製造されます。
また、古くからある陶磁器(オールドセラミックス)に対し、産業用として純度の高い原料を用い、精密に組成を制御して製造されるものを「ファインセラミックス」と呼びます。

「ファインセラミックス」を構成する原料は主にアルミナ・ジルコニア・窒化ケイ素・炭化ケイ素などがあり、代表的な素材を下記に記します。

  • アルミナ(Al_2O_3):最も汎用性が高く、コストバランスに優れる
  • ジルコニア(ZrO_2):靭性(粘り強さ)が高く、刃物や医療用部材に用いられる
  • 窒化ケイ素(Si_3N_4):耐熱衝撃性に優れ、ベアリングやエンジン部品に好適
  • 炭化ケイ素(SiC):極めて硬く、半導体製造装置などで多用される

これらの原料は調合、成形ののち高温で焼成し、さらに精密な加工を経て求めるセラミックの製品を実現します。

セラミックスの安全性

セラミックスは「化学的な安定性」が非常に高く、人体や環境に対して安全な素材として知られています。

  • 生体適合性:金属のようにイオンが溶け出す心配がほとんどないため、人工骨やデンタルインプラントなど、体内に埋め込む医療部材として活用されている
  • 化学的安定性:強酸や強アルカリに対しても腐食しにくく、食品製造ラインや化学プラントにおいて異物混入(コンタミネーション)を防ぐことができる
  • 環境負荷の低さ:資源として豊富に存在する元素(ケイ素やアルミニウムなど)が主成分であることが多いため、持続可能な社会を支える素材として注目されている
  • 製造プロセス/廃棄での安全性:セラミックスの製造プロセスでは主に粉砕・成形・焼結・加工など物理的な処理だけで化学的な処理がない。ファインセラミックスは酸化物や窒化物、炭化物が使用されるものの、着火や燃焼が起きにくいものも特長である。また、廃棄する際は砕いて処分や再利用するため、環境にも良い。

セラミックスの特長

セラミックスが他の材料(金属や樹脂)と比較して圧倒的に優れている点は、以下の4点に集約されます。

  1. 耐熱性に優れる
  2. 高硬度・摩耗耐性が高い
  3. 電気的性質(絶縁性・伝導性・半導体性)を持つ
  4. 低熱膨張性に優れる

1. 耐熱性に優れる

セラミックスの最も代表的な特長として、耐熱性に優れていることがあげられます。鉄の融点は1538℃、銅は1085℃、アルミニウムは660℃とされていますが、アルミナを原料としたセラミックスの場合は2000℃以上となります。1,000℃を超える高温下でも形状を維持し、強度低下が少ない特長があります。
この耐熱性の高さから、高温炉やスペースシャトルのタイルなどに使用されています。

2. 高硬度・摩耗耐性が高い

セラミックスは、プラスとマイナスの電気を帯びたイオンが結合する「イオン結合」や、非金属原子同士が電子を出し合って結び付く「共有結合」によって構成されます。この構成によって優れた硬度を持ち、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つものもあり、耐摩耗性が極めて高いといえます。高硬度の特長から切削工具や軸受部品など非常に高い強度が求められる部品にも活用されています。

3. 電気的性質(絶縁性・伝導性・半導体性)を持つ

セラミックスは高電圧にも高周波にも優れた耐性を持ち、代表的なものとして優れた絶縁性があげられます。優れた絶縁性から、電気は通したくないが、熱には強くあってほしい場面で活用され、例えばパワーモジュール用基板や半導体装置内のウエハを固定する「静電チャック」などにセラミックスが使われています。また、高周波通信用回路基板、送電線の絶縁碍子や、感電防止用の絶縁用のコーティング剤として使われることもあります。また、セラミックスのほとんどは絶縁体ですが、セラミックスの製造段階にあえて不純物を混ぜたり、焼成時に酸素濃度を制御して結晶構造にわずかな「隙間」を与えることで電気を通す半導体化も可能にします。

4. 低熱膨張性に優れる

多くの物質は熱を加えると膨張(熱膨張)し、冷えると縮む性質があります。しかしセラミックスは、温度が変化してもサイズが変わりにくいという「低熱膨張性」の性質があります。
この「低熱膨張性」は最先端の精密機器の世界では非常に重要な性質となります。例えば、シビアな精度が求められる半導体製造装置などでは数ミクロンの変化が不良品につながることもあるので、熱の変化が多い環境下で歪みや寸法変動が極めて少ないことは有難い性質といえます。

セラミックの加工は難しい?

セラミックは熱に強い一方で、加工の面では「極めて加工が難しい」部類に入ります。
セラミックのメリットである高硬度が、加工においてはデメリットになります。
難しい要因は下記があげられます。

  • 難削性(削りにくさ):一般的な金属用の超硬工具では太刀打ちできず、ダイヤモンド工具が必要
  • 脆性(もろさ):衝撃に弱く、加工負荷がかかりすぎると、粘り気がないので一度亀裂が生じるとすぐに割れて破損しやすい
  • 寸法制御の難しさ:焼成時(焼き固める際)に約1~2割程度収縮するため、焼成後の「後加工(精加工)」で寸法精度を出す必要があり、割れや欠けが発生しやすい

加工中に予想していなかった部分が欠損や破損してしまうこともあり、容易に加工速度を上げられず、金属と比べて加工コストが上がることもあります。

現在は金属のように加工できる「マシニング・セラミックス」や、炭化ケイ素を含んだ「高強度セラミックス」が開発されているものの、セラミックス自体は種類が多く性質も多様であるため、加工プロセスや工具の選定、条件出しが難しいとされています。

セラミック加工の品質を向上させる方法

高品質なセラミック部品を手に入れるためには、単に削るだけでなく、材料特性を理解した「トータルな工程設計」が不可欠です。

  • 最適な材料選定:用途に応じて、耐衝撃性が必要ならジルコニア、コスト優先ならアルミナなど、最適なグレードを選択することが重要
  • 焼成前加工(グリーン加工):まだ柔らかい焼成前の段階で大よその形状を作ることで、焼成後の高負荷な加工時間を短縮し、コストとリスクを低減できる
    例えば、溝形状の加工で止まり溝ではなく貫通溝を採用したり、複雑形状の作成をする場合は、なるべく成形段階で完成品に近付くよう設計し、極力加工プロセスを少なくすることが重要です。
  • 精密仕上げ:最終的な精度(ミクロン単位)を出すためには、高精度な「後加工」が必須となります。

セラミックの加工方法

一般的なセラミックは、原料調合、成形、焼成を経て最終的に仕上げ加工を行います。図面通りの製品を作る上で特に重要なのが、仕上げ加工です。ここでは、セラミックの代表的な加工方法についてご紹介していきます。

切削

切削工具を使用して材料の不要な部分を除去し、任意の形状に仕上げていく加工方法です。機械加工の中で最も広く使われています。高硬度のセラミックを加工する際は、チッピングが生じる可能性があるため、こまめに冷却し、加工時の熱変形を防いだり、切削工具の早期摩耗を防いだりするなどの対策が必要です。

研削

高速回転するダイヤモンド砥石を材料に押し当て、表面を削って任意の形に仕上げる加工方法です。表面を少しずつ削るため、高精度な加工を可能とし、高硬度のファインセラミックスの加工にも適しています。

研磨

材料の表面に研磨材を押し当て、表面の凹凸部を滑らかに仕上げる加工方法です。砥粒の大きさを変えることで、仕上がりの状態を自由に変えられるのが特長です。高精度な加工が可能で、鏡面仕上げにすることも可能です。

放電(導電性セラミックスのみ)

放電加工は、材料と電極との間に生じる熱や衝撃によって表面を削る加工方法です。導電性セラミックスであれば、一般的な金属のように放電加工が行えます。非接触式の加工方法であり、微細な形状の加工が可能です。

溶射(コーティング)

粉末・半溶状態のセラミックを、別の材料に吹き付け皮膜を形成する加工方法です。金属などの別の材料に吹き付けることで、耐熱性や耐摩耗性、絶縁性などセラミック特有の機能や性質を持たせることができます。

レーザー

レーザー光を使って非接触式で材料を加工する方法です。刃物や砥石を使って物理的な材料接触のない加工方法のため、高精度な微細加工が可能です。ただし、レーザー加工は高額で加工条件を出すのも難しいため、導入コストは高くなります。また、厚物の加工には不向きです。

セラミック加工のチッピング対策について

セラミック加工において最も頭を悩ませるのが、エッジ(角)が欠ける「チッピング」です。これを防ぐには、高度なノウハウが求められます。下記にチッピング対策のポイントを記します。

  • 工具の選定と管理:切れ味の落ちた工具は振動を招きチッピングの主因となる。常に最適な刃先状態を維持することが重要となる。
  • 加工条件の最適化:回転数、送り速度、切り込み量を極限まで微調整する。「いかに負荷をかけずに削るか」が技術者の腕の見せ所となる。
  • クーラント(冷却液)の制御:加工時の摩擦熱は局所的な熱膨張を招き、割れの原因になるため、適切な流量と温度管理で常に冷却と潤滑を行う必要がある。
  • R面取りの推奨:設計段階で可能な限り鋭角な角をなくし、R(丸み)をつけることで、応力集中を避け、チッピングのリスクを大幅に下げることができる。

東レ・プレシジョンのセラミック微細加工事例

ここからは、当社で実際に行ったレーザー微細加工の事例をご紹介していきます。

シリコン 多孔加工

シリコン 多孔加工
シリコンを用いて半導体装置部品を製作した加工事例です。これまで多孔加工はエッチングや金型加工が主流でしたが、超短パルスレーザーを用いた微細加工によって、高精度な連続加工が可能となりました。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_009.html

シリコン スリット・多孔加工

シリコン スリット・多孔加工
シリコンを用いて半導体製造装置部品を製作した加工事例です。高速加工で割れを抑えた加工です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_011.html

高精度なセラミック加工は東レ・プレシジョンにおまかせください

セラミックは優れた特性である一方で、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、材料特性を熟知し、ミクロン単位の精度を制御できる高度な加工技術が欠かせません。東レ・プレシジョンでは、セラミックの微細加工を行うことが可能です。

超短パルスレーザーを用いたミクロン単位の超微細加工から、大型平面研削盤を用いた数メートル単位の大規模な研削加工まで様々なオーダーに対応しております。

小ロットでの発注や試作段階での製作も承っております。お気軽にご相談ください。