レーザーで金属を加工するには?具体的な方法や加工可能な金属を紹介

レーザーで金属を加工するには?具体的な方法や加工可能な金属を紹介

近年は製品の技術進化が著しく、より良い製品作りのためには高度な加工技術が必要です。特に製品の主要部分を担う金属製品の場合、ミクロンレベルの加工精度が求められることも少なくありません。

そこで注目を集めているのが、レーザーを用いた加工方法です。本記事では、レーザーで金属加工を行うメリットや注意点、レーザーでの金属加工の種類や方法などをご紹介しています。高精度な金属の加工方法をお探しの方や、レーザー加工を導入しようと検討している方は、ぜひご参考ください。

レーザー加工とは

レーザー加工は、その名の通りレーザー光を用いた加工方法です。専用の発振器から取り出したレーザー光をレンズやミラーで集光し、高いエネルギー密度にした上で材料に照射し、穴あけ・溶接・彫刻などを行います。

レーザー加工の原理は、太陽光を虫眼鏡で集めて紙を焦がすのと同じですが、レーザー加工で用いる光源は、複数の波長が混ざり位相もバラバラな「自然光」ではなく、人為的に取り出した単一波長の「レーザー光」です。この「レーザー光」をミラーやレンズで集光し、高エネルギー密度にした上で材料に照射し加工を行います。

レーザー加工であれば、金属・合金・セラミックス・プラスチック・ガラス・木材などといった様々な素材が加工できます。ただし、材料によってレーザー光の吸収・反射・透過・屈折・散乱の程度が異なるため、素材に応じてレーザーの種類を変更したり、加工条件を調整したりする必要があります。

レーザーでの金属加工をおすすめする理由

1. 加工に自由度があり微細加工も可能

これまでの金属加工では、旋盤やフライス盤などを使った切削加工や、金型を使ったプレス加工などの、物理的に材料を削ったり変形させたりする方法が主流でした。しかし、そのような方法だと、使用する工具や金型の形状・大きさ・精度によって出来上がりの品質が大きく変わります。

レーザー加工は金属表面に高エネルギーの光を照射する「非接触」の加工方法であるため、工具の形状・大きさ・精度の影響を受けません。レーザー光の照射時間やエネルギー量も細かく調整できるため、加工の自由度も高めです。

近年は平面加工が行える2次元レーザー加工機だけでなく、3次元的な形状加工が可能なレーザー加工機も登場しています。また、専用のパルスレーザー加工機を使うことで、より高密度な微細孔加工やスリット加工も可能です。

2. バリ・歪み・変形が少なく出来上がりが綺麗

旋盤やフライス盤で金属加工を行う時は、切削工具の状態管理が欠かせません。摩耗の進んだ工具で加工を続けると、バリ・変形・歪みが生じます。特にステンレスやチタンなどの難削材を加工する際は、頻繁に工具の状態を確認する必要があります。

「非接触」の加工方法であるレーザー加工であれば、工具の摩耗状態による品質のバラつきが発生しません。また、高エネルギーのレーザー光を使って素材を溶融・蒸発させるパルスレーザー加工であれば切断面を滑らかにできるため、後処理の工数を削減できます。

このように、レーザー加工なら従来の機械加工では難しかった高硬度材の加工や、微細なパターン、複雑な形状の加工も可能になります。

3. 消耗品が少なく生産管理がしやすい

レーザー加工機の消耗品には、加工レンズ・アシストガス噴射ノズル・集塵機・コンプレッサのフィルタなどがあります。
もちろんこれらの消耗品は定期的に点検・交換が必要ですが、切削工具や切削油のように頻繁に行う必要はありません。設備導入や加工の条件出しさえできれば、日々の管理コストを少なく、安定稼働が可能です。

レーザーで金属加工を行う時の注意点

導入コストは他の加工機よりも高め

レーザー加工機は稼働中の管理コストを抑えることができますが、設備の導入コストは他の工作機械よりも高めです。

高性能な発振器・冷却装置・アシストガス供給装置・制御装置・集塵装置など、導入時に必要な設備が沢山あります。また、交換用のレンズ・アシストガスのノズル・集塵機のフィルタ・冷却用チラーの純水など、あらかじめ用意しておくべき交換品もあります。

他の工作機械やプレス機と比べて設備投資の回収期間が長くなるため、導入時は慎重な検討が必要です。

金属によっては条件出しが難しい場合がある

銅やアルミニウムなどの高反射材は、レーザーの反射率が高く、加工が安定しにくい特徴があります。反射したレーザーが光学部品を傷付ける懸念もあるため、慎重な条件選定が必要です。

また、熱伝導率が高い金属を加工する際は、熱の拡散を抑えるために、出力や照射方法を細かく調整する必要もあります。この条件出しをデータの無い状態から行うのは非常に難しく、ある程度の時間やコストが必要になります。

レーザー加工でできる代表的な金属加工

ここからは、レーザー加工機でどのような金属加工が出来るのかについてご紹介します。

穴あけ

金属材料に高ピークパワーのレーザーを照射し穴を開ける加工です。穴あけ加工は主に「熱的加工方法」と「非熱加工方法」の2種類があります。

「熱的加工方法」は直径10μm程度の微細な加工や、任意の形状、斜め方向の穴を開けることができます。また、下穴やパンチ打ちなどの前処理も不要で、1穴あたり0.1秒単位の高速加工も可能です。

「非熱加工方法」はレーザー光で材料の分子・原子の結合を直接分断する方法であるため、より微細な加工に向いています。「アブレーション加工」とも呼ばれています。

切断

材料に高ピークパワーのレーザーを照射し、金属を切断する加工です。レーザー切断は「溶融切断」「蒸発切断」「割断」がありますが、金属加工では主に「溶融切断」を使用します。

「溶融切断」は高ピークパワーのレーザーの照射に加え、アシストガスを噴流し貫通穴を形成します。この貫通穴を起点に、レーザーや材料を移動させて切断面を形成します。

溶接

材料に高ピークパワーのレーザーを照射し、金属を溶接する加工です。一般的なアーク溶接やプラズマ溶接と比べてビームを小さく集光できるため、薄板の溶接が可能です。

また、高ピークで密度を高くできるため、溶け込みを深くしても、ビード幅が狭く仕上がりを綺麗にできます。さらにレーザー溶接は、アルゴンや窒素ガス中、真空でも行えます。自動化やロボット化も容易に行えるため、量産工場でも多く用いられています。

マーキング

金属材料の表面にレーザーで文字やパターンを形成する加工です。レーザー光で金属の表面を局所的に溶融・蒸発・酸化させることで、半永久的なマーキングが可能です。

金属材料へのマーキングには、表面を酸化させる「黒色印字」や表面を削る「白色印字」、表面を深く掘り込む「彫り込み印字」、表面の皮膜やメッキを取り除く「表面層剥離」などといった方法があります。

表面処理

レーザー光を金属表面に照射し、材料特性を変化させる加工です。金属の表面処理には、急激な加熱と冷却を行い表面を硬化させる「焼き入れ」や、粉末やワイヤを溶かして溶着する「クラッディング」、表面を溶融した後ゆっくり冷却し耐腐食性や疲労特性を向上させる「グレージング」などあります。

レーザー加工ができる金属

レーザー加工ができる代表的な金属は、以下の通りとなります。

  • 鉄鋼
  • ステンレス
  • アルミニウム
  • マグネシウム
  • モリブデン
  • プラチナ
  • 真鍮
  • チタン
  • 各種合金

レーザー加工が用いられている主な金属製品

  • 精密機器部品
  • センサー枠・コネクタ・筐体部品
  • 自動車部品
  • エンジンカバー・マフラー・車体補強部材・内装部品
  • 航空機部品
  • 外板パネル・タービンブレード・薄肉構造部材・ハニカム構造部品
  • 医療機器
  • ステント・メス刃・人工血管・カテーテル・内視鏡パーツ
  • 電子部品
  • プリント基板・リードフレーム・放熱板・金属シールド
  • 時計・装飾品
  • 文字盤・金属バンド・刻印・パッケージング
  • 建築金物
  • 装飾パネル・金属サイン・格子デザイン
  • 産業機械部品
  • ノズル・治具・金型部品

金属のレーザー加工事例

高精度孔径・ピッチ加工

高精度孔径・ピッチ加工の加工事例

高精度孔径・ピッチ加工の加工事例

  • 材質:モリブデン
  • サイズ:Φ10mm×t0.05mm
  • 孔径:Φ0.05mm
  • ピッチ:0.075mm

モリブデンの高精度ピッチ孔加工です。モリブデンは融点が約2,620℃と非常に高く高強度であるため微細加工が難しいとされていますが、非熱式のレーザー加工であれば目標値±1um以下の高精度な加工が可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_008.html

マスク加工

マスク加工の加工事例

マスク加工の加工事例

  • 材質:モリブデン
  • サイズ:Φ15mm×t0.05mm
  • スリット幅:0.02mm
  • 加工エリア:Φ0.5mm

モリブデンのマスク加工です。スリット幅0.02mmと非常に細かく、壁面部分は平滑でシャープな仕上げとなっています。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_012.html

ディンプル加工

ディンプル加工の加工事例

  • 材質:ステンレス
  • 各辺の長さ:0.70mm
  • 深さ:0.07mm
  • 傾斜角度:14°
  • 底面部の面粗さ:Ra0.4μm

ステンレスに星形のディンプル(窪み)を付けた加工です。ディンプル部分の中央にある星形を頂点に、直線と円弧両方の加工を施しています。ステンレスはサビに強く、様々な製品に活用されていますが、熱伝導率が悪く接触式の加工が難しいため、微細加工は非接触のレーザー加工をおすすめします。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_017.html

形状加工

形状加工の加工事例

形状加工の加工事例

  • 材質:銅
  • サイズ:角20mm×t0.3mm
  • 辺長:0.10mm
  • ピッチ:0.15mm
  • 断面粗さ:Ra 0.1μm程度

銅に四角孔の形状加工を施しています。銅は金属の中では比較的柔らかく、熱伝導率が高い特徴を持ちます。反射率も高く、レーザー加工は難しいとされていますが、反射防止剤を塗ったり、適切な条件を洗い出したりすることで高精度な微細加工も可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_018.html

LIPSS加工

LIPSS加工の加工事例

LIPSS加工の加工事例

  • 材質:ステンレス・チタン
  • サイズ:50mm角

ステンレス・チタンのLIPSS加工です。LIPSS加工は、超短パルスレーザーを用いてフェムト・ピコ・(ナノ)秒レーザーを素材に当てることで周期構造を形成する表面処理加工の一つです。

表面に周期構造が形成されると、接地面積が少なくなり摺動性が向上します。また、回折格子の効果によって構造色を持たせることも可能です。写真のように金属表面に色味を持たせることもできます。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_019.html

金属のレーザー加工は東レ・プレシジョンにお任せください

金属のレーザー加工について詳しくご紹介しました。
非接触式のレーザー加工では、これまでの機械加工では実現できなかった高精度の加工や微細加工が行えます。ただし、レーザー加工機の導入には大きなコストが必要になります。また、金属のレーザー加工は自由度が高い分、条件出しや設定が難しく、使いこなすには時間と労力が必要です。このような理由でレーザー加工の導入を見送られている方も多いと思います。そこでおすすめなのが、レーザー加工を専門業者に任せる方法です。
当社東レ・プレシジョンでは、金属をはじめ各種材料へのレーザー加工も承っております。当社では、独自開発のレーザー微細加工技術を用いた高密度な精密微細孔加工を得意としています。今回ご紹介した作業事例以外の材料や形状にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。