レーザーの微細加工とは?原理や技術、加工事例や活用分野を紹介

レーザーの微細加工とは?原理や技術、加工事例や活用分野を紹介

近年のものづくり分野では、加工技術の精度が製品の品質を左右します。特に近年は海外企業の成長が著しく、競争の激しい製造業で生き残るには、より高精度な加工技術が必要不可欠です。そこで力を発揮するのが、レーザーを用いた微細加工です。
レーザー加工は、金属・非金属を問わず、さまざまな材料を正確に加工できる特徴があります。また、穴あけや切断、溶接、焼き入れなど、さまざまな加工に応用できるため、幅広い分野で活用されています。特にレーザーを用いた微細加工技術は、ミクロン単位の精度や寸法が求められる製造現場で活用されています。
そこで本記事では、レーザーの微細加工の原理やメリット、具体的な加工事例や活用分野などを詳しくご紹介していきます。レーザーの微細加工の導入を検討している方や、高精度・高品質な製品の製作方法をお探しの方は、ぜひご参考ください。

レーザー加工の原理

レーザー加工は、集光性に優れたレーザー光を加工材料に照射し、切断や溶接、熱処理などを行う加工技術です。太陽光を虫眼鏡で一点に集中させて紙を焦がすのと同じ原理で、専用のレンズでレーザー光を集光させ、高いエネルギー密度のまま照射することで、加工材料が溶解・蒸発温度まで昇温し加工が行われます。
レーザー加工は光の性質(直進・反射・屈折)を利用しているためコントロールしやすく、加工精度を高くすることができます。また、孔あけ・切断・溶接・彫刻・表面改質等の様々な加工を施すことができ、材質も金属・セラミックス・ガラス・樹脂・木材等、幅広い加工に適応します。

レーザー加工のメリット

レーザー加工には、主に次の3つのメリットがあります。

  1. 加工後の仕上がり精度が高い
  2. 複雑な加工が可能
  3. 加工プロセスを短縮できる

1. 加工後の仕上がり精度が高い

レーザー加工は光を集光して当てる加工技術のため、加工点を小さくできます。また、刃物を使う加工方法とは異なり、直接材料に接触することがないため、歪みやクラックなどの加工不良の発生も最小限に抑えられます。そのため、ほかの加工方法と比べて綺麗な仕上がりにできます。

2. 複雑な加工が可能

レーザー加工は、レーザー光の照射面積を細かく選定できます。そのため、複雑な形状の材料や、薄板などの変形しやすい材料、精度を求める製品の加工が可能です。

3. 加工プロセスを短縮できる

レーザー加工は非接触の光を使用するため、異なる製品を加工する際の工具交換が不要です。材料をセットし必要な条件やプログラムを設定するだけですぐに加工が始められます。また、出来上がりが綺麗にできるため、バリ取りや表面仕上げなどの仕上げ作業も必要最低限で済みます。

レーザーの微細加工が向いている理由

切削加工や研削加工などでは、切削工具を使って物理的に加工するため、工具の摩耗や材料の変形によって加工精度にばらつきが生じます。また、工具の精度やサイズによって加工できる大きさが限られます。
一方、レーザー加工は非接触式加工方法であるため、工具の摩耗や材料の変形などといった物理的要素の心配がありません。材料に合わせて出力や周波数、発振方式、パルス幅などを調整したレーザーを照射して加工するため高精度な加工が可能です。
微細加工に向いているレーザー加工の一つに、パルスレーザー加工があります。パルスレーザー加工は高エネルギー、短パルスのレーザーを用いることで、熱影響による材料損失を最小限にし、より精密な加工を可能にします。
また、パルスレーザーは「ロングパルスレーザー」「超短パルスレーザー」などに分類され、用途や加工精度によって使い分けられます。
「ロングパルスレーザー」はマイクロ秒からミリ秒程度の比較的パルス幅が長いレーザーです。照射部分を中心に熱エネルギーで溶融させて除去する加工方法であるため、熱伝導率の高い材料の加工や、深部への加工を行う際に活用できます。
「超短パルスレーザー」は、さらにパルス幅が短い(ピコ秒、フェムト秒単位)レーザーを用いた加工方法です。熱加工のように材料を加熱・溶融・蒸発させるのではなく、加工表面を分解・蒸散する(アブレーション加工)ため、熱影響による変形や歪み、バリやクラックなどを抑えることができます。

レーザーの微細加工を活用した分野

輸送機器分野

自動車や航空機などの輸送機器分野では、年々軽量化や高精度化が求められているため、レーザーの微細加工技術が欠かせません。センサー系の電子部品や燃料噴射ノズル、高機能電装部品などといったマイクロメートル単位の精度が求められるオーダー部品を加工する際に、レーザーの微細加工が重宝されます。また、アルミ合金やチタン、複合材(CFRP)などの高機能素材にも対応でき、連続加工も可能です。そのため、製品の大量生産にも向いています。

医療分野

レーザー微細加工は、滅菌性を維持しながら精密な穴あけや切断加工が可能です。医療用ピンセットや鉗子、ハサミ、ステント、カテーテル、微細チューブといった高度な医療部品の製造や加工にも活用されています。また、加工レシピをもとに、患者ごとに最適化された医療器具を作成することもできます。

エレクトロニクス分野

FPC(フレキシブル基板)や半導体パッケージの加工においては、高精度なレーザー微細加工が欠かせません。レーザーの微細加工であれば、パターン形成や貫通穴(ビアホール)の形成において、数十ミクロン以下の精度で安定した加工が可能です。また、非熱加工であるため、熱に弱い多層構造基板の加工にも適しています。

バイマテリアル分野

異種材料を組み合わせたバイマテリアル製品においても、微細レーザー加工は有効です。金属と樹脂、セラミックスとガラスなど、熱膨張率や硬度が異なる素材同士の加工・接合も高精度で行えます。また、レーザー加工は制御装置によってパラメータを細かく調整できるため、界面剥離の抑制や応力集中の回避といった課題にも柔軟に対応できます。

芸術・デザイン分野

アートやデザインの分野でも、微細レーザー加工が活用されています。紙、木材、アクリル、皮革など多様な素材に対しても、繊細な彫刻やカットが可能で、装飾品や工芸品、インテリア製品の制作に利用されています。試作段階から高精度な製品が作成できるため、一品物やカスタムオーダーを手がける企業でも多く用いられています。もちろん一度加工データを作成すれば、量産も可能です。

レーザーの微細加工の事例・種類

ここからは、当社で実際に行ったレーザー微細加工の事例をご紹介していきます。

高精度孔径・ピッチ加工

高精度孔径・ピッチ加工の加工事例
モリブデンを使用し、半導体検査治具を作成した加工事例です。孔・ピッチ共目標値± 1um以下と、高度な加工精度を実現しています。孔の形状は丸孔だけでなく、任意の形にすることも可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_008.html

シリコン 多孔加工

シリコン 多孔加工の加工事例
シリコンを用いて半導体装置部品を製作した加工事例です。これまで多孔加工はエッチングや金型加工が主流でしたが、超短パルスレーザーを用いた微細加工によって、高精度な連続加工が可能となりました。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_009.html

スリット加工

スリット加工の加工事例
CFRPのスリット加工(溝加工)です。幅0.5mm、ピッチ1mmと、熱の発生が少なく、材料の歪みや変形を抑えたまま加工できます。工具加工とは異なり、非接触の光を走査して加工するため、直線や曲線を組み合わせた形状にすることも可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_010.html

マスク加工

マスク加工の加工事例
タングステン、タンタル、モリブデンなどといった高融点金属箔のマスク加工です。非熱レーザーを使用し、高融点金属でも高品質な加工が可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_015.html

マスク加工(四角孔)

マスク加工(四角孔)の加工事例
四角孔のマスク加工です。写真の加工事例は、ピッチ0.2mmで角のR(曲率半径)が0.005μm以下という条件で行っています。格子状の高精度加工は難易度が高いですが、レーザーによる微細加工なら写真のように高品質に仕上げることが可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_013.html

除去加工

除去加工の加工事例
従来のレーザー加工では困難とされていたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)の加工事例です。材料の不要な部分にレーザー光を照射することで、目的となる形状や寸法に加工しています。また、掘り込み深さも調節可能です。
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_016.html

レーザー微細加工を行う際の注意点

レーザー微細加工は万能な加工技術のように思われるかもしれませんが、注意すべき点も存在します。ここでは、超短パルスレーザーの加工をおこなう際の注意点を記載します。

  1. 厚い素材・大型の素材の加工には向かない
  2. 加工スピードが遅い
  3. ランニングコストが高い

1. 厚い素材・大型の素材の加工には向かない

超短パルスレーザー加工は、基本的に材料に熱影響を与えない加工方法でパルス幅が短いと瞬間的なエネルギーは高くなりますが、単位時間あたりの平均出力は低くなるため、一度に大きく加工することができません。そのため厚い素材や大きな素材の加工には向いていません。

2. 加工スピードが遅い

超短パルスレーザー加工は材料除去に時間が掛かるため、全体の加工スピードが遅くなります。現在は加工レシピを工夫することである程度までは加工速度が上げられますが、過度に加工速度を上げると仕上がり精度が低下し、追加仕上げが必要になることがあります。

3. 導入コスト・ランニングコスト

微細加工で使う超短パルスレーザーの場合、発振器や制御システムが高額になります。また、レーザー加工機を導入する際は、安全対策としてレーザー光の外部漏れを防ぐシールドや、集塵排気システムなどの導入が必要です。それ以外にも、レーザー加工は外部エネルギーを使ってレーザー光を取り出すため、ランニングコストが大きくなります。また、焦点レンズやミラーなどは定期交換部品で、値段も高額です。

このように、レーザー加工装置を導入する際は、導入コストだけでなくランニングコストがかかることも認識しておく必要があります。

レーザーの微細加工は東レ・プレシジョンにおまかせください

レーザーでの微細加工は、ミクロン単位での加工が可能です。航空機や自動車などの精密機器の製造はもちろん、半導体や電子回路といった超精密機器の製造にも活用されています。また、金属だけでなく、ガラス、セラミックス、シリコン、CFRPなど、様々な材料が加工できます。一方で、レーザー加工の設備は初期費用やランニングコストが高いため、導入を検討する際は慎重に検討しなければいけません。

そこでおすすめなのが、レーザーの微細加工を専門業者に依頼する方法です。

あらかじめ設備やノウハウが揃っている専門業者に依頼すれば、低コストで希望通りの加工製品を、短時間で製作できます。

もちろん当社でも超短パルスレーザーを用いたレーザー微細加工を行っております。東レ・プレシジョンは、独自開発のレーザー微細加工技術により、高密度な精密微細孔加工を実現しています。小ロットでの発注や試作の製作も承っておりますので、お気軽にご相談ください。