銅の特徴と精密加工のポイント

銅の特徴と精密加工のポイント

銅は高い電気伝導性・熱伝導性を持つ金属です。安価で加工性にも優れるため、主に電気部品用途として幅広く利用されています。一方で銅は変形しやすく加工が難しい性質があり、特に精密加工を行う場合には高い技術が求められます。本記事では銅の特徴と精密加工のポイントを整理してお伝えします。

銅の特徴

銅の電気伝導性と熱伝導性

銅の最大の特徴は銀に次ぐ、高い電気伝導性と熱伝導性です。常温における銅の電気伝導率は6.0(銀:6.3、アルミ:3.8、タングステン:1.8。単位は[107S/m])、熱伝導率は398(銀:427、アルミ:237、タングステン:166。単位は[W/m・K])ときわめて高い値を示します。銅は銀よりも安価なため大量に使用される工業用途に適しています。

銅は柔らかく加工が難しい

銅は面心立方構造を持ち、展延性が高く、曲げや絞りなどの成形に適した金属です。一方で、降伏応力が低く加工硬化が進みやすいため、加工時に意図しない変形が起こりやすく、精密加工では寸法精度が安定しにくいという課題が生じます。また、表面傷や加工硬化による割れにも注意が必要です。

銅の主な用途

銅は電気伝導率が高いため、送電ロスを抑えられる点が特徴です。そのため電力ケーブルやモータ・発電機、自動車・家電製品など通電用途の幅広い機器に使用されています。熱伝導率の高さを利用したエアコン・冷蔵庫の熱交換器、ラジエータ・ヒートシンクなどの放熱部品への活用に加え、耐食性や抗菌性もあるため、建築材料や医療・衛生分野など用途は多岐に渡ります。

純銅と銅合金の種類

純銅の特徴

純銅は銅の純度が99.90%以上あり、銅本来の高い電気伝導性と熱伝導性を持ちます。主に電線やモーター、変圧器などに使われます。

無酸素銅
純度99.96%以上の高純度銅です。不純物がきわめて少なく、電気伝導性・熱伝導性に優れ、真空機器や半導体装置部品など、高品質・高信頼性が要求される環境に使用されます。

タフピッチ銅
純度99.9%以上の高純度銅です。導電性と加工性のバランスが良いため、電線や電気部品など広く一般的に使用されています。ただし、水素雰囲気中で加熱すると水素脆化を起こす欠点があります。

銅合金の特徴

銅合金は銅に他の金属を添加し、電気・熱伝導性を保ちながら、強度や加工性を高めた材料です。自動車などの輸送機器や電子機器・電気製品に使われます。

黄銅 (Cu+Zn)
銅に亜鉛を加えた合金で、真鍮(しんちゅう)とも呼ばれます。加工しやすく強度と耐食性に優れるため、主に水回り・配管用部品などの建築設備分野で使われます。

青銅 (Cu+Sn)
銅にスズを加えた合金で、ブロンズとも呼ばれます。耐摩耗性と耐食性に優れるため、軸受や歯車などの摺動部品から、銅像などの美術工芸用途まで幅広く用いられています。

リン青銅 (Cu+Sn+P)
銅にスズとリンを加えた合金です。ばね性・耐疲労性などの繰り返し特性に優れるため、主にコネクタ端子やスイッチ・リレーなどの電気接点部品として使用されています。

銅加工のポイント

切削加工

銅は延性が高いため、切りくずが工具に巻き付きやすい特徴があります。そのため、すくい角の大きい鋭利な工具を用い、切りくずを分断して排出させる必要があります。切削速度は速めに設定することで構成刃先(ワークの一部が工具に凝着する現象)の発生を抑えられ、良好な仕上げ面が得られます。送りや切込み量を調整して過度な発熱や切りくずの絡みを防ぐこと、潤滑性の高い切削油を供給することも重要です。

プレス加工

プレス加工性に優れる一方、加工硬化やスプリングバックが大きいため、鉄鋼材料とは異なる金型設計が必要になります。打ち抜き加工では、銅特有の粘りを考慮してクリアランスを広めに設定してバリを抑えます。曲げ加工では、スプリングバック量を見込んだ角度設定が重要です。深絞りでは材料が硬化して割れやすいため、中間焼なましを行うなど工夫が必要となります。

溶接加工

銅は熱伝導率が高いため溶接熱が逃げやすく、母材の溶け込み不良が起こりやすい材料です。そのため、一般的な鉄鋼よりも高電圧・高電流で入熱量を上げ、さらに母材を予熱するなどの工夫が必要になります。また、高温では表面が急速に酸化し、溶接部の強度低下や気孔の原因となるため、アルゴンなどの不活性ガスによる確実なシールドが不可欠です。

銅の精密微細加工

マイクロドリル加工

マイクロドリル加工は、極小径のドリルを用いて、穴あけ加工を行う精密切削加工技術です。銅は柔らかく粘りが強いため、切削中に切りくずが工具に絡んだり、構成刃先が発生しやすく、加工精度の低下や工具摩耗の原因となります。安定した微細加工には、鋭利な工具の使用が不可欠です。切削速度は速め、送り速度は遅めに設定し、冷却と工具設計を最適化することが安定した銅の切削につながります。

当社では、合成繊維口金の精密加工で培った知見を活かし、高精度・高アスペクト比(深度L/直径D)のマイクロドリル加工を実現しています。

精密プレス加工

銅は展延性が高く変形しやすいため、材料の伸びや摩擦によるひずみが出やすく、寸法精度や仕上がりに影響を与えます。特に薄肉部品や微細形状の精密プレス加工では、金型設計において、クリアランス調整や摩擦低減などの工夫を施し、変形挙動を制御することが重要になります。

当社では、銅加工用の専用金型設計に加え、CAE解析を活用した精密プレス加工技術により、Φ10μmクラスの微細孔や複雑形状の加工にも対応しています。

放電加工

放電加工は、ワークと電極の間で発生する放電現象を利用して材料を溶融・除去する加工法です。加工形状を転写した電極を用いる形彫り放電加工と、細いワイヤー電極で材料を切断するワイヤー放電加工の2種類があります。切削工具と異なり非接触で加工するため力が加わらず、変形や加工硬化の影響を受けにくい点が特長です。微細放電加工は、ドリルやプレスでは困難な微細穴や複雑な三次元形状への対応も可能で、バリの少ない高品質な仕上がりが得られます。

当社の形彫り放電加工は、最小径Φ3μmの微細孔加工に対応しています。

レーザー微細加工

レーザー微細加工は、マイクロオーダーの多孔パターンやディンプル形状を高速・高精度に形成できる加工技術です。非接触のため工具摩耗や機械的な応力が抑えられる特長があります。銅は熱伝導性・反射率が高くレーザー加工が難しい素材ですが、レーザー条件の最適化・高出力化によって対応が可能です。微細加工の場合は照射時間の短い、超短パルスレーザーを用いることで熱影響を抑えた高品位な仕上がりが得られます。

当社では多軸スキャナーと超短パルスレーザーを組み合わせた独自技術により最小径Φ10μm、最小ピッチ50μmの微細・高密度な多孔加工を実現しています。

集束イオンビーム(FIB)加工

集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)加工は、イオンをきわめて細く集束して材料表面に照射し、原子レベルで除去していく先端加工技術です。銅の高い熱伝導性や加工性の影響を受けにくく、非接触で局所的な加工ができるため、熱ひずみを抑えながら微細かつ高精度な加工が可能になります。FIB加工を使えば、ナノオーダーの孔加工や複雑な三次元形状の形成が可能です。

当社のFIB加工技術は最小径Φ0.1μmの超微細精度を実現し、太陽観測ロケット部品や真空機器の漏れ検知用途にご活用いただいています。

東レ・プレシジョンの銅の微細加工事例

ここからは、当社で実際に行った微細加工事例をご紹介していきます。

形状加工 – 四角孔

形状加工 – 四角孔
https://www.tpc.toray/technology/hole/hol_018.html

銅の精密加工は東レ・プレシジョンにご相談ください

銅は展延性が高く成形性の良い材料ですが、精密微細加工では銅特有の粘り強さや変形を抑えるためには、高度な加工技術と条件設計が不可欠です。

東レ・プレシジョンは、精密微細加工技術の向上に長年取り組み、ノウハウを蓄積してきました。銅をはじめとするベースメタル材料でも、用途や要求精度に合わせた最適な加工方法で、お客様の多様なニーズにお応えしています。